無料会員の登録 詳しくはこちら

新聞

「記者だけではない」新聞社の仕事

 新聞社というと、多くの人が事件現場でメモ帳を手に走り回る姿を思い浮かべるかもしれない。しかし、新聞を作る現場には実に多様な職種が存在し、「記者」という言葉では括りきれない専門性と分業体制がある。特に全国紙では、職種ごとに採用が分かれ、入社後に職種をまたいで異動することは原則としてない。そのため、就職を目指す学生にとっては、新聞社にどんな部門があり、どのような仕事を担うかを事前に理解しておく必要がある。

目次

編集部門

編集部門 社会を切り取る現場の最前線

社会部

 編集職のなかでも、取材記者が配属される部門は多岐にわたる。まず、多くの人が記者と聞いて想像するのが「社会部」だろう。ここでは事件や事故、災害といった日々の社会現象を取材し、現場に張りついて情報を集めることが日常となる。昼夜問わず動く必要があるため、生活は不規則になりがちだが、スクープ合戦の最前線に立つやりがいも大きい。

政治部

 一方で「政治部」は、国政の動向を追う専門集団だ。政党、官庁、政治家などを相手に、派閥ごとの動きや政策決定の裏側を探る。複数の記者がそれぞれの担当分野を持ち、情報を持ち寄って記事を組み立てるというチームプレーが特徴だ。首相の行動を一日中追う「首相番」など、記者の体力と観察力が試されるポジションもある。

経済部

 さらに「経済部」は企業や産業の動きを追う。金融、IT、エネルギーなどの分野ごとに分かれ、担当業界の動向を分析し記事にする。経済記者は社長インタビューから不祥事の突撃取材まで幅広く対応する必要がある。比較的土日に休みやすいとされるが、業界のニュースは突発的に発生するため、柔軟な対応が求められる。

編集部門の専門領域

専門性の高い領域も社会・政治・経済という三本柱に加えて、新聞にはより専門的な取材を行う部門も存在する。

科学部

「科学部」は医療、環境、エネルギー政策など高度な知識を必要とする領域を扱い、原発事故や感染症といったテーマでは特に存在感を発揮する。理系出身者も多く、専門性が記事の質を大きく左右する。

外信部

 また、「外信部」は海外支局での現地取材や、本社での国際ニュース編集を担う。赴任先の国だけでなく周辺地域の情勢も担当することが多く、語学力と国際情勢への深い理解が求められる。近年は現地特派員に加えて、国内で外電を読み解く人材の役割も高まっている。社によっては「国際報道部」などと呼ばれることもある。

文化部

 文化や生活をテーマとする記者もいる。「文化部」は文芸、映画、音楽といった分野を担当し、作家やアーティストへのインタビュー、新刊やCDの紹介記事などを手がける。「生活家庭部」は家事・育児からジェンダー問題、消費者保護まで、暮らしに根ざしたテーマを幅広く取材する。いずれもスクープよりも企画力や視点の独自性が重要となる。

運動部

 スポーツを専門に扱うのは「運動部」だ。プロ野球やサッカーなどではチーム別に担当が分かれ、選手や監督への密着取材もある。アマチュアスポーツでは複数競技を兼任することも珍しくない。

整理部と校閲部

記事を形にする縁の下の力持ち

 記事は書いただけでは紙面にならない。そこで重要な役割を果たすのが「整理部」と「校閲部」だ。

整理部

 整理部は、記者の原稿に見出しを付け、紙面のレイアウトを考える部門だ。短時間で記事の優先度を判断し、限られたスペースに情報を配置する。見出しの一言が記事の印象を左右するため、実は高度な判断力が要求される。朝日では「コンテンツ編成本部」がこれにあたる。

校閲部

 一方の校閲部は、原稿の事実関係や表現を精査する。固有名詞や日付、用語の正確さをチェックし、誤報を防ぐ最後の砦となる。どちらもシフト制で、深夜まで働くことが多いが、新聞の信頼性を支える根幹的な役割を担っている。

営業・事業・技術

支える側の仕事 営業・事業・技術

 新聞社の経営を支えるのは「編集」だけではない。広告、販売、イベント企画などを担う「業務部門」も重要な柱だ。広告部は企業とのタイアップや特集紙面の企画を行い、販売部は全国の販売店と連携して宅配制度を維持する。事業部では美術展やコンサートといったイベントを企画・運営することもあり、文化振興の一翼を担っている。

 「技術部門」では、新聞制作のデジタル化に対応するエンジニアが活躍する。制作システムや印刷設備の管理などを担い、紙面を文字通り「形」にする仕事だ。

 さらに、近年では「デジタル部門」の存在感も急速に高まっている。各社がネット配信や動画、SNS戦略に力を入れはじめ、デジタル編集者やエンジニア、マーケターなど新たな職種も登場している。新聞社が「デジタルシフト」を余儀なくされる中で、今後ますます注目される領域となるだろう。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次